第13章 帰宅
猿比古はセプター4に戻った。
怜は未だに踏ん切りがつかないでいた。
父「・・・國常路に会うのか。」
そんな怜に気付いていたのであろう。
怜「・・・会わなきゃ、だよね。」
母「無理に会う必要なんてないわ。」
怜「でも、会わなきゃまた忘れちゃう。」
カタンとナイフとフォークを置いた怜。
怜「会ってくる。」
すでに怜は幼い姿に戻っており、てとてとと歩き出す。
母「怜・・・。」
怜「私は、大丈夫。」
持ってきた大きな人形を抱えて部屋を出る。
母「・・・。」
その後ろ姿を心配そうに見つめる怜の母親。
父「大丈夫さ。もう怜は幼い子供じゃない。私達だって、あの頃とは違う。そうだろう?」
母「・・・わかってるわ。もう、あんなのは嫌だもの。」
てとてとと歩く怜。ショートブーツにニーハイ、ミニスカを履き、淡いピンク色のパーカーを着ている。ちなみにパーカーには長いウサギ耳付き。両手には大きな青いくまの人形。
白昼堂々歩いているために人目を惹かないわけもなく、道行く人々は怜をちらちらと見やる。
御柱タワー。
何年も閉じ込められた部屋のある建物。
正直ここには戻ってきたくはなかった。でも、そんなわけにもいかない。
10年会わない間にひこは成長していた。ちょっと捻くれてしまったけど、ひこは優秀な人間になってた。
それに比べて私はどうなのだろう?
ひこと会わなくなってからも自分の意志で成長させなかった身体。学校にも行ってないから、社会なんてまるでわからない。あの頃からずっと、私は変わってなんかいない。
自分が変わらなきゃ、ダメなんだ。