My important place【D.Gray-man】
第46章 泡沫トロイメライ
「廊下の隅でぎゃーぎゃー喚いてんじゃねぇよ」
「っ…」
「げほ…った、助かった…」
溜息混じりに大股で歩み寄ったユウが、テワクの手首を掴んで引き離す。
強い力で止められたのか、顔を歪めながらも離れるテワクの手にほっと一息。
よかった…窒息するかと思った。
クロエの方はと言うと、ユウが止めに入る間でもない。
「か、神…っ生…!」
口元に手を当てて感極まった状態で、素早く私の背後に隠れたから。
うん、なんとなく言いたいことはわかった。
アイドルだもんね、そんな人間が目の前にいれば感極まるよね。
「濡れ髪が…っ陶器のような肌に張り付いて…え、えろいわ…っ」
「大丈夫?クロエ」
色んな意味で。
「う、煩いわねっあんたは其処から動くんじゃないわよッ神田様との距離が…ッ距離、ち、近い…」
私と同じに風呂上がりなのか、半端に髪を濡らしたまま肩にタオルを掛けているユウは、多分修練場帰りなんだろう。
そんなユウを前に私の背中に齧り付くようにして、身を縮ませたクロエが相も変わらず噛み付いてくる。
噛み付いてくるけど、声の大きさはさっきと全然違うし、ちらちらと私越しにユウを盗み見る様がなんかもう…
「可愛いね、クロエ」
「は、はぁっ?」
デレ全開の仔猫みたいで、なんだか可愛い。
「ありがとうございました、神田さん。流石ですね」
「見てたんなら止めろよ、お前も」
「私じゃとても力で勝てそうになかったので。丁度良い所に居てくれました」
「腕引っ張ってったのは何処のどいつだ」
「まぁ、そうでした?」
「…ね、ねぇ…」
「うん…」
にこやかな笑みを向けるイザベラに、ユウも決して悪態は突いていない。
そんな二人の姿を、思わずクロエとまじまじと見やる。
なんだろう、なんか…
「二人って面識あるの?」
顔見知りな感じ、する。