My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「そんなに身構えんなよ。…なるべく痛くないようにする」
できるだけ優しい声で囁いて。
握った手を口元に寄せると、皮膚の薄い手首に口付けた。
唇から伝わる、トクントクンと鳴り響く微かな雪の鼓動。
血脈の気配。
噛み付きたくなる衝動を抑えて、ゆっくりと皮膚の上に神田は鋭い歯を立てた。
「ん…っ」
雪を襲ったのは、ちくりと針を立てたような微かな痛みだった。
瞑っていた目を開ければ、手首に鋭い歯を立てる神田の姿が映る。
そのまま覆うように唇が触れて、ちゅくりと舌を這わされ吸引される。
痛みは然程ない。
それよりも血を吸われている目の前の非常識な光景に、なんだか頭がくらくらするようだった。
「美味しい、の?」
あまりに熱心に吸われるものだから、つい問いかけていた。
噛み跡を拭うかのように神田の舌が手首を這い、少しだけ離れる。
「血生臭い」
「な」
「血の味は血の味だ。味覚が変わる訳ねぇだろ」
「そ…そうだけどっ変わるかもしれないでしょっ?」
「変わるかよ。鉄分の味しかしない。美味くない」
「それ飲む意味あるの…」
呆れた表情で呟く雪に、しかし神田の吸血行為は止まらなかった。
美味だとは思わない。
しかし雪の血液は自分のものとまるで違っていて、一口含めば強いアルコールを摂取しているかのように、くらりと思考が酔い回る。
次の一口、また一口、と追い求める。
(…まるで麻薬だな)
アルコールよりも依存が深まりそうな予感に、わかっていながら抵抗できない。
じわりじわりと、体と頭の奥底から湧き出る欲。
深く噛み付きたくなる衝動を抑えながら、一心に血を啜った。