My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
息を呑む。
パリ警察署の独房での出来事と重なったものの、あの時のように扉は激しく開かれなかった。
ギィ、と静かに軋む音を立てて、外側からゆっくりと開かれる鉄の扉。
一気に差し込む地下通路からの光。
コムイ室長やルベリエ長官が来た時と同じ。逆光で、扉の前に立っている人の顔は見えない。
でも。
「──っ」
きっちりと一つに結ばれている、サラサラの長髪。
高い身長に、無駄な脂肪のない均等の取れた体。
そのシルエットに、一目で誰かわかった。
息を呑んだまま、息を忘れたように一瞬呼吸が止まる。
「……」
シルエットから言葉はなかった。
逆光で見えない顔は真っ直ぐに私に向いたまま、沈黙を作る。
そしてコツリと、檻の中に踏み込んだ。
ガチャン、
重い扉がその人の手によって再び閉められる。
僅かに開いていた小窓の隙間も、その手できっちりと閉められた。
地下通路から差し込む光が全て遮断されて、真っ暗な闇へと変わる。
だけどすっかりこの暗闇に慣れた私の目は、逆光ではなくなったシルエットの顔をやがてぼんやりと映し出した。
女性と間違われてもおかしくない、でも私から見れば充分男性である整った顔。
はっきりとした目鼻立ちに、光の当たり具合によっては影を作る程に長い睫毛。
薄い唇に、形の良い眉。
憶えてる。
曖昧にしか見えてなくても、しっかりと私の記憶が。
この人は間違いなく──
「る、ルパン?」
暴君様に変装した大泥棒だ。
「……は?」
間を置いて、呆れの混じったぶっきらぼうな声が返ってくる。
何言ってんだって空気満載で。
や、だって。あのデジャヴな物言い、全部ルパンのものだったから。
そうに違いない。
うん、デジャヴ。