My important place【D.Gray-man】
第43章 羊の詩(うた).
「……」
「…ミランダ」
「……」
「ミランダ」
「……」
「ミランダ、大丈夫か」
「えっ?」
斜め40度。
俯き加減に目元に影を落とし、きゅっと結んだ唇はその強さに皺を寄せている。
心音を聞かずとも、悶々と彼女が一人悩み込んでいるのは一目でわかり、堪らずマリは彼女の手に大きな自分の手を添えた。
他人の体温に触れて、やっと意識を戻したミランダがはっと見上げてくる。
ココア色の落ち着いた色合いの瞳。
それはやはり不安に満ち溢れていて、見えずともマリは微かに顔を顰めた。
「ここ最近、ずっとそんな感じだぞ。…あまり一人で考え込み過ぎるな」
「え、あ…ご、ごめんなさいマリさんっ私ったら…ッ」
「いいんだ、謝る必要はない。…雪のことだろう?」
「…っ」
そっと握っていた手を離して、首を横に振る。
確信はあった。
ミランダが思い詰めた表情を見せるようになったのは、雪の正体をコムイから聞かされた直後。
マリ自身もすぐには状況を理解できなかった。
今だって心の整理はできていない。
教団では少ない女性団員として、雪はミランダとも度々接点を持っていただろうから。
そんな雪に心優しいミランダが気持ちを揺らがせてしまうのは、仕方のないことだろう。
「マリさんは…信じられる?…雪ちゃんが…その、敵だった、なんて…」
「……」
広い教団の廊下で佇んでいるのは、マリとミランダの二人のみ。
大きな窓の外は暗い森を映し出しているだけで、動くものは何も捉えない。
森の入口へと続く解放された東扉の前で足を止めると、ミランダは胸の前で両手を握り締めた。
「…まだ敵と決まった訳じゃないさ」
恐る恐る見上げてくるミランダに、笑顔を向けることはできなかったけれど。
マリは確かに首を横に振ってみせた。
「雪が敵だと決まった訳じゃない」
もう一度、今度ははっきりとした口調で。