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My important place【D.Gray-man】

第43章 羊の詩(うた).



 足首をひたりと舌が這う。
 踝を持ち上げられ、躊躇なくそこに舌を差し出すティキの姿を目前に、雪はごくりと唾を嚥下させた。



「…ぃ…」



 そんな喉奥から、震えた声を微かに発して。



「嫌がらせかーッ!!!」

「っ!?」



 瞬間、力を込めた足蹴りがガンッ!とティキの顎に下からクリティカルヒット。
 グキリと変な音がしたのは彼の首と雪の足首から。



「いっだ…!」

「ッッ…! それ…俺の台詞…ッ」



 結果、二人して顎と足を抑えて痛みに悶絶する羽目になった。



「ってぇ…っ容赦ない蹴りすんね…」

「そっちが容赦ない嫌がらせするからでしょ…っ」

「嫌がらせじゃねぇし。消毒だし」

「それをご都合解釈って言うんです…っ」



 顎を擦りながら、曖昧な世界でも痛みははっきりあるものなんだと、ティキは他人事のように感心していた。
 目の前の半ば覆い被さっている雪を見れば、彼女も感じる痛みは同じらしく、足を抱えて顔を歪めている。
 それでもしっかりとこっちを睨んでくるものだから、ティキもまたむすりと見返してやった。



「人の親切を無碍にすんなよな」

「親切って。どこが。何が」

「だって煩くなかっただろ?」

「は? 何が」

「鎖の音」

「……」



 ティキが手首や足首に触れる度に、枷の鎖が音を立てていたのは事実。
 なのにその音は雪の耳に煩わしく届いてはいなかったらしい。
 図星だったのか、黙り込む雪にティキは鎖を手にして軽く引いた。

 ジャラ、と擦れる金属音。



「煩く感じんのは、それだけ意識してるからだ。こんな状況じゃ仕方ないかもしんねぇけど、あんま自分を追い詰め過ぎんなよ。そのうち息もできなくなるぞ」

「……」

「わかった?」

「…だからって…もうちょっとやり方ってもんがあるでしょ…」

「それは鎖に繋がれてる雪が悪い。虐めて下さいって両手広げて迎えてるようなもんでしょこれ」

「迎えてないわ! ドSか!」

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