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連れ立って歩く 其のニ 砂編 ー干柿鬼鮫ー

第4章 怒髪天を突く


角都が暁に帰った。

げっそりと疲れた様子ではあるが財布は膨らんだらしく、機嫌は悪くない。

鬼鮫はキレた。

角都が広間に現れた瞬間鮫肌を抜きながら只の三歩で間合いを縮め、容赦ない速さで斬りかかる。

斬りかかられた角都より、広間に居たメンバーの方が呆気に取られた。

腹に響く音がして、ついさっきまで角都の居た場所の床が抉れる。

散乱する木っ端の中、鬼鮫は無言で鮫肌に角都を追わせた。横様に振るわれた鮫肌はまたも角都を捕らえ損なって、デイダラの掛けた椅子ごと広間の大きな卓を砕く。

「ぅあ、あぶ、あっぶね、あっぶねえ、バカ、鬼鮫ッ、オイラは関係ねえだろ!?何しやがんだ、テメエッ」

度肝を抜かれたデイダラが引きつった声で怒鳴り散らすも、鬼鮫の耳には入らない。飛段の傍らに飛んだ角都目掛けて鮫肌を振り下ろす。

「うお、ちょ、待て鬼鮫・・・ッ、うわィ・・・ッ、ゴラやんなら周り見てやれッ、あァ!?」

慌てて飛び退りながら飛段が叫んだ。

再び床と椅子が打ち砕かれる。

角都は用心深く足場を保ちつつ、またも飛び散った木っ端を避けて目をすがめた。
只でさえ短かい気が切れかかっている様だ。避けるだけだった構えが攻めの気配を帯びる。

鬼鮫は休む間もなく鮫肌を持ち上げ、その勢いのまま太い太刀筋で半円を描いて掬い上げるように角都の顎を狙い定める。

後ろに倒れるようにそれを避けた角都が、床に着いた手を軸に体を捻って鬼鮫の足を払いにかかった。空振りした鮫肌が更に半円を描いて床に着き、角都の払いを受ける。

角都の脛が鮫肌に噛まれてパッと血を噴いた。

「へ・・・ッ」

隅で頬杖をついてこれを見ていたサソリが不意に笑った。静かな広間に小馬鹿にしたようなせせら笑いがやけに目立って響く。

止めに入ろうと腰を浮かしかけていたイタチが、目を細めてサソリを見た。

「何が可笑しい、サソリ?」

「オメエは可笑しくねえか、イタチ?あのデカブツは何に怒ってんだ?あ?」

「・・・それを聞くか、お前は」

呆れ顔をしたイタチを尻目にデイダラが口を挟む。

「牡蠣殻の事で怒ってんだろ?アレ?旦那、気付いてなかったのかよ?案外鈍いな?うん?」

サソリはうんざりと手を振って、フと口の端を上げた。

「で?肝心のバカはどこにいんだよ?え?間抜け」




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