第5章 企み【無神コウ】
それはダイニングでコウと夕食を摂っていた時のこと。
『えむネコちゃん♪』
コウが楽しそうに隣の名前を呼ぶ。
「はい」
横を向くと、コウがスープをすくったスプーンを持ってニコニコしていた。
『はい、あーん』
「えっ?」
『聞こえなかった?ほら、あーん』
どうやらスープを飲ませたいらしい。
当然のことに驚いて一瞬固まってしまう。
「あっ…」
『これ飲んだらオレと間接キスできるよ?
ほら、口、開けて?』
間接キスと言う言葉にドキッとする。
飲まざるを得ない状況に、名前は半ば無理矢理口を開けた。
『いい子だね~はい♪…あっ』
ガシャン!
スプーンが落ちる。
スープは口には入らず、
名前のシャツを汚した。
『ごめんごめん、手が滑っちゃったよ~』
「いえ…」
名前はシャツに溢れたことよりも、
コウと間接キス出来なかったことのほうが大事だった。
すぐにコウがそばにあったタオルで拭いてくれる。