第10章 愛を請う
風呂を済ませて部屋へ戻ると、優姫が窓辺に佇んでいた。
月明かりに照らされて幻想的な姿はため息が出るほど美しい……
こちらを振り返り見つめる瞳がやはり熱があるように潤んでいる。
「こちらへ来て休め。」
「え?」
意外とばかりに優姫の瞳が見開かれる。
そんなに余裕なく求めていただろうか……
いや、今夜は彼女に許しを得たからにはそのつもりではいたが、具合が悪い女性を組敷くほど自分は飢えているわけでは無いつもりだ。
「具合が悪いのではないか?熱が出ているようだ……今夜は休んで身体を労れ。」
彼女に近づきその手を取って引き寄せる。
抵抗なく腕に抱かれた彼女が決まり悪そうに俯く。
どうしたのだろうか?彼女の顔を覗き込もうとかがむのと、優姫が意を決したように顔を上げたのは同時だった。
濡れた瞳……これは……
情欲に染まっているのだと気づいた時には、背伸びした優姫が唇に口づけていた。
ピチャッ……
唇を辿る柔らかなものは優姫の舌か。
「んっ……ごめんなさ……はしたないって、嫌わないで……」
ポロリと優姫の瞳から透明な滴が落ちる。
ギュッと心臓を鷲掴みにされた。
堕ちるとはこういうことか……
淫靡な泣き顔から目が離せない。
もうこの女無しでは生きていけないとさえ思える。
前言撤回だ、自分はこれほどまでにこの女に飢えている。