第10章 愛を請う
「ここで静めてくれ。」
もう一度唇を指で撫でられる。
ここで、ってことは口でして欲しいということ?
理解したとたんに頬に熱が集まる。
最近では同期生との交流も増えて食事をしたりするときに、こうした下世話な話を耳にすることもある。
口淫という行為があることは話で耳に挟んだ位で、知識も全く無い。
「あの……口でするのは、初めてなので、う、上手く出来るかわからないですけど……」
着物の上からでもわかるくらい反応しているのだから、男性の生理現象は解らないが、このままでは確かにつらそうだ。
それに、今日は白夜様は……
見上げた瞳には情欲に隠されながらも、確かに悲しみの色がある。
苦しんでいるこの方が、私との行為の間だけでも忘れられたら……
「初めて、なのか?……っ!では無理を言ったな、すまない。」
「い、いえ。あの、白夜様に満足いただけるかはわからないですけど、がんばります……」
何の気合いだろう。
見つめ合って可笑しくなって、少し笑った。
白夜様も微かに笑ったようだった。
「では、あの、どこかに腰かけて下さい。」
「あぁ。」
書斎の窓辺に腰かける白夜様の輪郭を夕日が縁取っていた。
淡いオレンジの光が当たって綺麗……