第10章 愛を請う
自室へ戻って暫く、廊下からけたたましい足音が響く。
恋次か……
大方ルキアのことで異議を申し立てにでも来たか?
仕方の無い奴め。
しかし、私に逆らうだけの気概があったことだけは誉めてやろう。
バンッ!!
扉を開けてそこに現れた人物を見て、朽木白夜は言葉を失った。
走ってきたのか髪が乱れている。
どれだけ急いだのか、肩で大きく息をして、何処から走ってきたのか顔が真っ赤になっている。
何処かで転んだのか着物の裾は泥で真っ黒になっている。
私が知る限り、彼女がこんな風に足音も気にせず走るなどあり得ないことだった。
私の顔をみると、みるみる瞳に涙が貯まるが、溢さないように必死になっている。
「あのっ、急に朽木隊長の、顔が見たくなって……その……お茶でも淹れてきます。」
出ていこうとする優姫に駆け寄り堪らず抱き締める。
華奢な身体を腕の中に納めると、張り詰めていた気持ちがほぐれていく。
涙を見せないように俯いているが、細い肩が震えている。
「あの、ご迷惑だとは思ったんですけど、朽木隊長に一人苦しまないでほしくて……ごめんなさい。」
「謝るな。今、優姫に逢いたいと思っていたのは私の方だ。」
耳元で囁けばさらに震えが大きくなる。
声を殺して泣く姿に胸が痛くなる。