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男性声優さんの裏生活【R18】

第5章 喪失と充実


『んなことより早く来いよ』


「わかりました……」


プツリと電話が切れて、数秒立ち尽くした。


今まで画面の向こうにいたはずの声優さんに、すぐに会うことができるのに……。


違う、嬉しさで心臓が鳴り止まないんじゃなくて、重々しくドロドロと何かが体の中を流れているような。


苦しいのに胸が締め付けられなくて、気持ち悪いのに……どこか満たされて行く。


たっつんの部屋は確か……。


引き出しから階数を調べて、たっつんの部屋に向かう。


エレベーターだと誰かに気づかれるかもしれないから、一応階段を使って。


にしても、疲れる……。


やっぱりエレベーターにすれば良かったかな…。


一段一段、疲れを紛らわすように大きく息を吐く。


「よいしょっと」


最後の階段を上って、たっつんの部屋の前の廊下を急ぎ足で歩く。


あれ、そういえば早く来いとか言われてたよね?


もしかして階段でかなり時間使ったんじゃ……。


ピンポン……♪


ガチャ


「鈴木さん、お待たせしました」


申し訳なさげに肩をすくめて、そっと視線を顔に向けてみる。


うわ!無表情……!


この顔絶対に怒ってる……!
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