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水蜜桃Series

第3章 水蜜桃の果肉





軽くラフな格好に着替えて扉を外を指差すめぐみの手を引いて、自室を出る。途中すれ違う人間誰しもが足を止め、「めぐみ、可愛いな!」と全員が笑顔で去っていく。普段堅苦しい人間もあまり表情を変えない人間も薄く微笑んで横を通り過ぎるのだ。童女一人がこの敷地内の人間の活動力になっているのかもしれないと柾輝は思った。強ち外れてもいないその考えを胸に、丁度足を止めた郭英士がめぐみの頭を優しく撫でる。わざわざ西園寺玲お手製の帽子を脱いで笑顔を振りまくめぐみも嬉しそうに、英士の手をぎゅっと握った。その可愛らしい反応に英士も笑顔を零し、ジト目で黒川を睨んだ。


「今年はめぐみと黒川が組んだんだ。ふーん、へーえ…。」
「…んだよ。上からの通知だぜ。去年は不破と回ったらしいな、めぐみ。」
「うん、だいちいろいろつれてってくれたし、めぐみかわいいっていってくれたよ!」
「あの不破が?珍しい。でもめぐみ、良く似合ってる。可愛いよ。」
「えへへ、ありがとう、えいし!えいしもかっこいいよ!」
「ありがとう。それじゃ、黒川に気をつけて頑張ってね。」
「? うん、じゃあね、パーティーでまたおはなししようね!」
「おい郭、」
「黒川、めぐみに手出したらどうなるか分かってるよね…?」
「…肝に銘じとくよ。」
「そりゃ結構。」


去年は不破大地がめぐみと組んでパーティーの内部をを歩き回り楽しんだのだが、「珍しいものが見れたよ」と渋沢が笑っていたのを思い出す。廊下の壁にぶら下がっているコルクボードに貼り付けてある写真が複数あり、その中にめぐみの手を引きながら飴を口に銜えている不破の写真があった。棒付きキャンディを口に放り込み、ニコニコ笑っているめぐみとしっかり手を繋いでいる。少しばかり周囲に注目されて、残念そうにしている結人も端に映っていた。


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