第9章 霧が晴れたら
月島side
さっきからチラチラと、山口の視線が落ち着かない。
わかってるよ。めぐみの誕生日だろ?
確かに本人は完全に忘れてるみたいだけど、、
今日、ずっと落ち着きがないってのは、チョット大袈裟なんじゃない?
10年ぶりに、ともに迎える誕生日。
こうして普通に過ごしていると、離れていたコトをつい忘れそうになるから不思議だ。
だからって、もう離れてあげる気はサラサラないケドね。
「ん〜っ…」
読んでいた本をパタッと閉じて、こたつからめぐみが出た。
ホラ、もう寝る気だよね。
自分の誕生日くらい憶えておくべきだと思うケド、昔から本に夢中になりやすいめぐみには、あんまり意味ないんだろうな…。
「寒ッ!」
突然入ってきた冷気の方向を見ると、めぐみが和室唯一の窓を開けて白い息をハァーッと自分の手に吹きかけていた。
「めぐみ寒いよッ!!」
「んっ、ごめんね。もうちょっとお月様みさせて。」
僕や山口の制止を聞かずに、両手を合わせるめぐみの仕草に、不覚にも僕は、可愛いな…とか、思ってしまった。/
ま、山口もだろうケド。
「ねっ、それより、すっごい空、綺麗だよ!蛍も忠もみてみなよ!!」
ハァーッ…しょうがない…。
せっかくこたつで暖まった身体をゆっくりと出して、窓の前でぴょこぴょこ跳ねるめぐみのカラダをカイロ代わりに抱きしめる。
急に大人しくなったカイロに、僕は耳元で話しかけてやる。
このバカみたいに寒いなか、僕をこたつから出させた罰だ。
「ナニ?月がどうしたの…?」
なんてことない内容なのに、耳元で囁かれたってだけで、めぐみの顔は真っ赤だ。
「ククッ…赤過ぎデショ。」
「蛍のバカっ…//」
「…ふたりとも、せっかくの綺麗な月、見ないの??」
山口が呆れた笑いを浮かべながら、右隣に立つ僕らを見てきた。
山口の言葉に目線を夜空に向けると、雲ひとつない真っ黒の空を、大きな月と月明かりが照らしていて、とても綺麗だった。
チョット前まではよく霧がかかっていた筈なのに。
「綺麗だね〜…」
「ね。」
すっかり夜空に見惚れているめぐみと山口を見て、僕はあるコトを思った。