第2章 別れと継続
シホside
目の前の先輩……いや、ご主人様は機嫌が悪い。
転勤により引っ越すことは前から言ってあった。
北一から転校することも、簡単には会えない所に行くことも。
でもそれならどうして……?
「そんなの怒るに決まってんじゃん!真白のこと奴隷にしてたった二週間で終わっちゃうんだよ⁉︎」
「は、はぁ……」
いつもの爽やかさとSが急に損なわれたように、及川先輩は子供みたいに駄々をこね始めた。
口を3の字にしてブーブー言っている。
「セックスした数もたったの一回!あの日以外に何にもしてないじゃん!」
「ごめんなさい……」
でもどうしようもないもんなぁ。
せっかくのイケメン先輩にお近づきになれたなんて、ファンの子からしたら夢かもしれないけど。
私はどうしようって気もない。
だって、しょうがないんだもん……。
「いつまで」
「え?」
「いつまで?……いつ、コッチに戻ってくるの」
そんなのわかりませんけど。
オロオロと焦る表情を見せる私に、及川先輩はズッシリと力を入れて頭に手を置いてきた。
ビクッ……!
怖いっ!何なのこの威圧……
駄々こねモードから一変、及川さんは真っ直ぐ私を見て言った。
「青城。そこに、俺はいるから……」
目元は前髪のせいで影を帯びていたけど、瞳を暗く感じたのはそのせいだけじゃないだろう。