第12章 IH 宮城予選
シホside
インターハイの宮城県予選を明日に控えて、烏野高校バレー部はやれることはやってきた。
必死になって練習する姿を見て、勝ってほしい……私はそう思うようになった。
青城には岩泉先輩がいるとか、烏野のマネージャーだからとか、そういう考えや葛藤から来た気持ちじゃなくて。
汗を流して努力する姿や、練習のミスひとつひとつに本気で悔しがる姿を近くで見てたら、報われて欲しいって思わずにはいられなかったんだ。
レシーブで飛び込む時の真っ直ぐな視線、スパイクを振り抜く時の力の入った顔つき。
今まで見えてなかった選手たちの細かい景色が、最近やっと見えるようになった。
飛べ
その文字に胸が震えた。
長々と語られる言葉じゃなくて、たった二文字に込められた重みとインパクト。
真っ暗な烏色の背景には、白い文字色がよく映えた。言葉だけじゃなくて、デザインまでかっこいい。
「なんてぴったりなんだろう……」
三年生や二年の先輩が潔子さんの言葉に泣き出す中、私は未だ潔子さんと武田先生の見せてくれたその言葉から目が離せずにいた。
わかってたのに、改めて見ると凄い……。
「明日。絶対勝つからな」
力強く頭の上に手を置かれる。上を向いていたのに押さえつけられて視線が下がる。
騒がしくなる他のメンバーの後ろ姿が見えて、誰も私たちの方は見ていない。
「痛いな……。頑張ってよね」
「当たり前だ」
この自信たっぷりな声を聞くと、私にまで負けるはずないって自信が移ってくるんだよね。
本当に才能だけじゃないよ……影山は。
ゆっくり影山の手が下に落ちていく。私と影山の二人で、もう一度視線を上げて「飛べ」の文字を見つめた。
明日は烏野高校に来て初めての公式戦。
北一時代、及川先輩の凄まじいプレーを幾度とベンチで見てきた。
でも今度はさらに才能が開花した影山のプレーを公式戦で見ることになる。ベンチには座れないけれど。
………それでもね、凄くドキドキしてるんだ。
選手たちのプレーを真剣に見ることができるようになったからこそ、早く応援したくてたまらないの。