第46章 skirtred spring.
昼休み。
「あれ、何だったんだろうね?」
云う及川に岩泉はサァ、と肩をすくめた。
自分が知るはずもない、と。
何も変わりない昼休み。
二人は一緒に昼ご飯を口に運ぶ。
それは何も変わりない日常――だった。
「あの…岩泉さんはいますか?」
教室の入口近くにいた生徒に誰かが聞いている――のが聞こえた岩泉は振り向く。
――細い体躯、長いツヤツヤした髪。
それをぎゅっと編んでいる。
スカートは長く、ブラウスの前はきっちり首までボタンがとまっていた。
きっちり着られた制服姿は――初めて会ったあの日を彷彿とさせた。
「おい、及川、おい」
「何サ岩ちゃ…」
岩泉にバシバシ頭を叩かれ顔を上げた及川。
二人の視線が教室に入ってきた一人の女生徒に集まる。
「あの…はじめまし」
「木原」
岩泉の声にパァと彼女の顔が輝く。
「つむぎちゃん!」
及川は立ち上がり彼女に駆け寄る。
旧知の筈なのに、何故か二人は全くずっと彼女を忘れていた。