第44章 暁の明星
「あ、うん。そうだよね。あれ…オレ達何でここに?」
及川が顔をしかめた。
「だからさ、花ならないんだ。冬だから。春が来たら、花が咲く、又、ね」
畳み掛けるように石和が云う。
石和がそっと赤茶色の植物を撫でる。
それは縦長の大きな蕾をいただいていた。
「花は休んでいる。だから『無いんだ』」
ああ、そうだ。
花は冬には咲かない。
「うん。又春によろしく…って、三年はいなくなるか。次期部長さまは今後ともよろしく!」
石和が笑っている。
「はい。よろしくお願いします」
矢巾が応えた。
そして誰ともなく引き返す。