第3章 花嫁のお仕事!
足が、がくがくする。
ぷるぷるしながら必死で立っていると京谷先輩が目に入る。
こっちをジッと見ていた。
やだ。
見ないで。
「京谷?」
岩泉先輩が声を上げた。
京谷先輩が、こっちに歩いて来る。
生まれたての子鹿のような私はぷるぷるしながらそれを見守った。
「吸って良いんだな?」
苦々しい声。
まるで血を吸いたくないみたいな声だ。
「ひ、ひゃい!」
これ以上なんて無理。
ナンテ、薔薇の花嫁(笑)の私には許されないんだ。
乱暴に空いた手をつかまれて。
あ、ちょ、待って、そっちの手は唾液まみれ?!
そんな私の杞憂など知らず。
思い切り手を噛まれた。
指を口に含まれ、付け根の血管を牙が突き破る。
粗暴なのに、まるで遠慮するみたいにゆっくり吸われた。
唾液まみれの手をなめられるなんて、間接キスみたいだ。