第1章 夏目漱石
「・・・が綺麗だネ」
なんて言ったのか聞き取れなかったけどそう呟いた幼馴染の声は
酷く私の心に響いた。
呟きに反応して顔を上げると綺麗な夜空を眺める横顔。
禍々しい化粧をしていないその顔は世辞を抜きにしても
整っており男だと分かっていても美しささえ感じる。
技局の帰り、たまにはとネムに言われて涅邸にお邪魔した。
ご飯の支度でも手伝おうと思ったのにやんわりと断られて
しまって仕方なく縁側で星を見て湯浴みを済ませた
マユリと一緒にご飯を食べる。
「久々だろう?どうだネ、我が家は」
「うん。やっぱり居心地良いね、ココ」
一緒に食べようと誘ったがネムはそれもやんわりと
断り自室へと下がってしまった。
それをマユリは咎める訳でもなくさも当たり前のようにしている。
「いいの?局長。」
「もう仕事は終わったんだヨ。局長は止めたまエ」
「・・・仕方ないじゃん。癖なんだもん」
マユリは十二番隊、私は十一番隊。
マユリは隊長で私は四席。
幼馴染だからといって気安く呼べたりしない。
「最後に来たのはお前が四席になってすぐの頃だったネ」
「そう、ね。忙しいんだよ?うちは隊長も副隊長も書類とか
苦手だからさ」
「フン」
鼻先で笑いながら手酌で日本酒を煽るマユリ。
「お前の希望だったんだろう?十一番隊が」
「うん。戦うことしか頭に無い野蛮な奴等・・・
それがなんかね、格好良く見えて」
「でも研究も好き・・・と、変わった奴だヨお前は」
そう。私は十一番隊四席にして列記とした技局員。
だから二足の草鞋を履いて毎日クタクタになるまで
働いている。もちろん、幼馴染だからと言ってマユリ
が甘やかしてくれることもなく・・・
「おかげさま一週間くらいは寝ずに過ごせる身体になりましたよ。ええ」
「良かったじゃないかネ」
そう言いながらマユリは酒瓶とぐい飲みを持って
縁側へと行く。
「明日は休みかネ?」
「・・・何年ぶりかの、ね」
「こっちに来たまえヨ」
言われた通り足を進めて隣に腰掛ける。
ふんわりと香る石鹸の香りに日本酒独特の
アルコールの香り。
普段から技局でしているアルコールとは
違った香りが鼻を掠めて酔っても居ないのに
胸の鼓動が早くなる。