第20章 側にいたい
振り向くと、そこに立っていたのはレオ姉。
「レオ姉…もう休憩なんですか?今ドリンク配りますね」
何も悟られないように無理に笑顔を張り付け、私はドリンクの入った籠を抱えてレオ姉の横を通り過ぎようとした。
が、レオ姉は私を通すまいとその前に立った。
「?レオ姉…どうしたの…」
「どうして笑ってくれないの?」
「え?」
見上げたレオ姉の表情は悲しいものだった。
「征ちゃんが変わってから、はじめのころは華澄ちゃんも笑ってくれてたわ。だけど…どうして今はそんなに苦しそうな顔なの?」
「そんなこと…」
「華澄、何をしているんだい?休憩だ」
レオ姉と向かい合って、この場をどう切り抜けようと焦っていた時。
征十郎が体育館の中から声を掛けた。
「実渕も…華澄を呼びに行ったんじゃなかったのか?」
征十郎に言われたレオ姉は、少し考えるような顔をした後にまたいつもの優しい表情に戻る。
そして、「行きましょう?」なんて言いながら私の手に持つ籠を持ち上げると、そのまま体育館の中へ入っていった。
「華澄?どうした?」
「…何でもないわ」
ボーっとしたまま立ち尽くしていた私を征十郎は心配そうに覗き込む。
私はすぐに征十郎に笑みを見せて、体育館へと入った。