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夢と魔法と冒険と

第4章 今剣


「さてつーくん、今から一戦交える訳だけど用意はいい?」

「はい、あねうえさまいつでもいけますよ」

土産物屋の出入口から少し離れた場所で、手を繋ぎながら決意を新たにする2人の姿があった。夕食時より少し前、陽が陰り始めた頃土産物屋はだんだんと混雑し始める。そう、戦場と化すのだ。御手杵の時の轍を再び踏むまいと早めに来たつもりだったが、すでに戦は始まっているようである。入口でカゴを持ち、店の中へと一歩踏み込むと審神者は今剣の手を離した。

「じゃあつーくん、さっき言った通りにお願いね。上の方にあるものは近くにいるお店の人に取ってもらうのよ?」

「はい、わかってます。あねうえさまもごぶうんを」

「つーくんも気をつけてね。それじゃ戦闘開始!」

審神者の声と共に持ち前の機動を活かして人混みの中へと消えていく今剣を見送って、審神者もまた人混みの中へと姿を消した。


この土産物屋は園内最大の売場面積を誇る菓子の店である。その最大の特徴は、店内が3つのエリアに分かれていることだ。商品のある売場とレジカウンターだけを集めたエリア、そしてその間を分けるようにして存在する会計待機スペース。その内の待機スペースにカゴいっぱいに商品を入れた今剣が立っていた。懸命に背伸びをしながら人混みの中を見知った影を探している。と、そこへ商品補充用のコンテナを持った店員が現れた。今剣の姿を見つけて歩み寄り、隣にしゃがみ込み目線を合わせる。

「どうしたの、僕?はぐれちゃった?」

人混みの中親とはぐれた迷子だとでも思ったのだろう。安心させるように優しい笑顔で話しかけてきた。

「あねうえさまをまっているんです」

「お姉さんときたんだね。今日は何に乗ったのかな?」

「ひこうきにのりました。あと、おおきなおふねとじぇっとこーすたーにも!」

「わぁ、沢山乗ったんだ!あれ?保安官のバッジ、僕が取ったの?」

「ぼく、ぜんぶあてたんですよ、すごいでしょう?」

「つーくん‼︎良かったぁ、ごめんね?」

「あねうえさまおそいですよ」

ようやく保護者が現れたのを見て、店員は手を振って去っていった。カゴの中に打ち合わせした通りの商品が入っているのを見て、2人とも顔を見合わせて笑う。

「さすがつーくん。じゃあお会計しよっか」

「はい、あねうえさま」

手を繋ぎレジカウンターへと歩を進めた。
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