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【刀剣乱舞】 最果てに見る白 

第1章 残されたもの




一期の袖を掴むように握り締め、美桜の視線は舞い降りる白い雪を捉えたまま言葉を紡ぐ。
それは遠く誰かに囁くように、優しくも凛とした響きを奏でた。

「以前……ずっと前に、ここで鶴丸に言ったの……。
どんなものにも穢されていない……どんなものも決して勝らない……貴方の想いを私にみせてくれたのならば、私は何事にも負けないわって―――――」


「勝手な……我侭なのにね」と呟く彼女が、僅かに微笑んでいて。
一期は空を見上げて、落ちる雪に頬を触れられて、そして思う。


貴方はそんなにも、この方を愛していらっしゃるのですか……
鶴丸殿―――――と。


苦しい想いを抱きながらも、一期の心は、不思議と温まる感じがしていた。
こんなにも想い合える二人を見ることが出来て、想いの深さを思い知らされて。

それでもそんな二人を尊敬し、そして何者よりも好きになることが出来て……

複雑な感情総てが、大切なもののように思えてきて、一期はそっと目を閉じ、ゆっくりと美桜に囁きかける。



「貴女のことを……私にも守らせて下さい」



それは願うように、それは祈るように……答えを求めぬ、純粋な想い。
叶うことない想いかも知れないけれど、想いを貫く心に限界など必要なくて。



深々と降る白い雪の中、総てが浄化されたような、そこには無垢なまでの、誰かを想う心しか存在していない静けさで。
大切な想いを、何処までも優しく包み込むように、雪はただ、音も無く穏やかに二人を閉じ込めていく。






暖かい白い世界の中で、微かに香る優しい香りが、そっと、美桜の心に安らぎをもたらしていた事を、一期は、気付かないままでいた―――――









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