第2章 情報の共有【Ⅰ】 小さな背中
銀時side
そよ姫誘拐事件から二日後。
そろそろ書類整理が終わっただろう踏んだ銀時は真選組の屯所に来ていた。
神楽はお妙の家に預かってもらっている。
この前の事件は俺は察知することができた。
出来たはずだったのだ。
その事を伝えるために。
息をはき、開かれた扉のなかに入ろうとする。
「旦那、なんか用ですかィ?」
聞きなれた声に肩をびくつかせ、ふりむくと沖田がいた。
見回りからちょうど帰ってきたのか少し疲弊しているように感じられる。
「珍しい。サボんなかったのか。」
「……そんなことしてる暇なんてあるわけないでさァ。」
その悔しそうな様子から銀時は察知した。
「やっぱりアイツはお前らの知り合いで間違いなかったのか。」
問うようにして声をかければ、大きな瞳を細め、睨んでくる。
しかし反論もする気力もないのか何も言わない。
むしろ言えば認めると言うことにもなる。
しかし、面子どうこうより彼自身が認めたくないのだろう。
「察するに、初恋の女だったとか?」
「……そんなんじゃねェ……。」
掠れた声で否定はしているものの、まるで説得力を感じない。
「千里は……そんなんじゃ…… ただ、ただっ……!」
「総悟。」
沖田の後ろから土方が遮るようにして声をかける。土方も沖田同様、疲弊しており目の下にはクマをつくっていた。
「大串くんも休んだ方がいいんじゃない?」
「詮索をするな。お前には関係ない。」
「一応そよ姫奪還の現場にいたから関係ない訳じゃねぇじゃねぇか。」
「自分の尻拭いじゃなかったのか?」
低く、有無を許さぬ声で銀時の噛みつきを振り払う。
「総悟、お前は中に入って休め。」
「……一旦帰ってきただけでィ。すぐに」
「総悟、副長命令だ。休め。」
「ふざけ」
「ふざけてない。」
声を荒げた沖田を声だけでねじ伏せ、鋭い視線を沖田に送る。
「色々な事が分かってきて思うところがあるのもわかる。だけどそろそろ私情を捨てろ。出来ないなら外す。」
働きすぎだ休め。もともと働いてないのに慣れないことするからだ。
土方がそう言うと観念したのか唇を噛み、肩を悔しさで振るわせながら中に入っていく。