第7章 ハロウィン
予想はしていたが、これ程とはな。
小太郎がやりたがっていたハロウィンパーティーを開催したのはかなみが興味を示したからだ。彼女を招待する口実にマネージャーの正太にも参加してもらう。僕達が付き合っていることは、かなみと同じクラスの正太しか知らない。彼女はあくまで「正太のクラスメイト」として参加してもらうつもりだった。
「ねえねえひぐっさん、秋月さんってひぐっさんの彼女?」
「ただのクラスメイトだ葉山。アイツの彼氏は別にいる」
こそこそと正太と話していた小太郎がかなみの所へ向かう。玲央はさりげなく飲み物を持って行き、かなみの隣りをキープしている。普段は花より団子の永吉も、彼女に興味があるのか話しかけては怖がられている。
「いいのか?赤司」
「想定内だ。彼女が楽しんでいるなら構わない」
なにか言いたげな視線を寄越す正太を置いて、グラスを二つ持ち彼女の元へと向かった。
「楽しんでもらえているようですね、秋月さん」
「赤司君、今日はお招きありがとう」
空になったグラスと交換するように新しいグラスを渡すと、かなみは安心したように微笑んだ。他愛のない話を一つ二つして、彼女にだけわかるようにドアの方へ視線を泳がせる。かなみがそっと頷くのを確認してさりげなくその場を離れた。
10分ほど経っただろうか、かなみは僕の部屋を訪れていた。わざと灯りは点けていない。射し込む月明りだけを頼りに、窓辺に佇む僕のところまでやってきた彼女が恨めしげに声をかけた。
「もう、征十郎ってば一人で先に行くんだもん。上手く抜けてくるの大変だったんだからね?」
「楽しそうにしていたから、気を利かせたつもりなんだが」
「あ、そんなこと言って実はヤキモ、んっ⁈」
彼女を抱き寄せて、唇で唇を塞ぐ。ゆっくりと舌を絡めて彼女の紡ぐ言葉を飲み込む。呼吸が限界に近づくまで貪り続けた。
「Trick or treat.君に選択権はない。どちらを望んでいるかはすぐにわかるからね」
耳元で囁けば、かなみの腕が背中に回された。
「さあ、ハロウィンパーティーを始めようか」