第5章 【今吉】カカオとルージュと
聞くと、あの日の買い物は、中学の頃の後輩(【悪童】で有名な花宮真。いじるといい反応をしてくれるらしい)にあてた、心ばかりの嫌がらせだったらしい。
『なんだ…1人で勘違いして、私バカみたいですね!』
「いやぁ、まさか見られとるなんて思わへんくてな。…すまんかった」
『いえ、いいんですよ』
「でもおかげでこんな大人っぽい悠紀が見られたんやし、得した気分やわ。…でもま、もう無理はせぇへんでな」
『…!わ、わかってますよ!!』
苦笑いしながら言うと、今吉先輩は「それでこそ悠紀や」と笑ってくれた。
「ほな、ボチボチ帰るとするか」
『…そう、ですね』
名残惜しくて、どもってしまう。
「心配せんくても、これからたくさん一緒にいれるんやで。せやな…次の休日、遊園地にでも行こか」
それを察した今吉先輩が、私にそう言ってくれた。
私は嬉しくてパッと顔をあげ、『行きます行きます!』と声を出していた。
現金な私。
「そんじゃ、約束や」
『はい、約束ですよ』
そう言って、私は差し出された指を絡み合わせた。
気がつくともう日がだいぶ傾いていて、
その日見た夕焼けは、今までに見たどんなものよりも綺麗だった。
END