第3章 瞳をあけたままで~斎藤一編~
それから五年の歳月が流れた。
新選組は転戦を重ねたが、俺は会津にてこれ迄一緒に戦い続けた仲間達と袂を分かった。
土方局長は負け戦では終われないと更に北上を目指したが、俺は武士としての道を与えてくれた松平容保公と会津藩の為に微衷を尽くしたいと会津に残留する事を決めたのだ。
最後の最後まで戦い抜いたが結局会津藩は降伏し、改易後斗南藩として再興する。
斗南藩士として一緒に来て欲しいという申し出を貰って、俺は一つの条件を元にその話を受け入れた。
愛する人を迎えに行って、一緒に連れて行く……
俺が出した条件は只それ一つだ。
反対される事も無く、寧ろ歓迎される形でその条件を飲んで貰った俺は、新選組と別れる直前に不知火から聞いた時尾の居場所に向かい………
間も無く其処に到着する。
時尾と別れてから五年だ。
………待たせ過ぎたと思う。
もう其処に時尾は居ないかもしれない。
誰か良い相手を見付けて所帯を持っているかもしれない。
俺の事など忘れているかもしれない。
そんな事を思いながらも……それでも一目だけでも良いから、時尾の元気な姿を見たかった。
段々と重くなる足取りを何とか奮い立たせ、時尾が住んでいると聞いた庵が見える場所まで辿り着くと……
その庭先に時尾は居た。