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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第5章 あなたになら




その後、モモはずっとローの傍にいて看病し続けた。

本によると、毒素が回れば熱が上がり、やがて呼吸困難に陥り、一日足らずで命を落とすらしい。

どれだけ冷やしてもローの熱は下がらない。

呼吸は荒くて苦しそうだ。


モモは医者じゃない。
薬剤師だから薬のことばっかり学んだ。

でも、学ぶべきことはもっといっぱいあったじゃないか。

危険な生き物を知らない。

その毒になにが効くかわからない。

医者じゃないから?

言われた薬だけ作ればいいから?


(違うでしょう。そんなのは、わたしの目指す薬剤師じゃない!)

生活のために薬を作るのではなく、誰かのために薬を作りたい。

気づくのが遅すぎる…。
モモは自分の無力さを呪いたくなった。

(ロー…。)

苦しげに呼吸をする彼の手を握る。


わたしに、できること。

わたしにしか、できないこと。


モモの歌は不幸を呼ぶ。

歌が原因で両親を失った。

歌が原因で海軍に捕らわれた。


だから、二度と唄わないと決めた。


ねえ、でも。
あなたを失うこと以上に、不幸なことってあるの?


彼の温もりも、柔らかなキスも二度とない。

声も聞けない、匂いも嗅げない。

そんな世界は、想像もしたくない。


(わたしが唄えば、あなたは変わってしまう?)

仲間ではなく、利用価値のある『セイレーン』として見る?


ズキン

胸が痛くて、切なくなる。


でも自分に出来ることがあるのに、それをしないでこのままローが死んでしまったら…。

(わたしはきっと、自分が息をしていることすら許せない…!)


それに、わたし…。

あなたなら。

あなたになら。


『道具』として利用されても構わない--。


熱く汗ばんだ手を握ったまま、大きく息を吸い込んだ。


2人きりの静かな医務室に、セイレーンの『癒しの歌』が流れた。



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