第6章 最終話
無音。微かな光で少しずつ覚醒していく私の意識。どうやら私は、眠ってしまったみたい。お酒を飲んだから――――って、待って。
「!」
慌てて上半身を起こして、勢いよく首を左右に振りながら周囲を確認する。
「お目覚めですか?」
私の思考がつながるよりも早く声をかけられ、動揺が走る。セバスチャンさんが椅子に座った状態でこちらを見ている。私はベッドの上にいる。
「えっと、ここは……?」
暗くてよく分からないけど、物が少ない部屋。ぱっと見て分かるのは、今私がいるベッドと、デスク、椅子、それにノートパソコンと小さな棚のようなものに本が並んでいる。多分、生活と仕事に必要な最低限のものしか無いのだと思う。
「私の部屋ですよ。」
言われてすぐに、真新しい記憶が蘇る。そうだ。私は結局酔いつぶれるようにして、あの居酒屋で眠ってしまったんだった。この状況だと、セバスチャンさんが眠ってしまった私を介抱してくれたんだよね。どこか汚してしまったりしていないだろうか、心配になったりもする。
「すみませんでした。私、酔いつぶれてしまって。ご迷惑かけて本当にごめんなさい。」
ここまで言ったところで、下半身に圧迫感。……そうだ。お酒飲んだから、近くなるよね。生理現象。
「あ、あと……その、お手洗い、お借りしても、よろしいでしょうか……?」
最後は消え入りそうな声になってしまった。それにしても、恥ずかしい。
「クス。ええ、どうぞ。そこを左手ですよ。」
足を下ろすと、ひんやりとしたフローリングの感触。これで、私も少しは目が覚めそう。もう、居酒屋で感じたようなふわふわとした感覚は自分の中から消えていた。多分、寝ている間に酔いがだいぶ醒めたのだと思う。