第3章 第3話
「そうですか。いえ、結衣さんは真面目ですね。それに純粋です。」
まさかとは思うが、いや、もうこれは確実。セバスチャンさん、私のこと―――
「セバスチャンさん、私とのことからかってました?」
「ええ。」
特に悪びれた様子を見せることも無く、素敵な笑顔を顔に張り付けているセバスチャンさん。もしかしたら、私が(セバスチャンさんの圧力に抗うことができずに)一生懸命頭を働かせていた様子を見て楽しんでいたのか。そう思うと、さすがに少しムッとした。
「ちょっ、それってあんまり――――」
それってあんまりじゃないか、趣味が悪くないかと言おうとした瞬間、セバスチャンさんの涼しい声に遮られる。
「一生懸命に答えを探す貴女が、あまりに可愛らしかったものですから。」
私の言葉の続きは、セバスチャンさんの声の中に、溶けるようにして迷子になってしまった。