第10章 マジバ【火神 大我】〈アンケート〉
今日マジバにいるアルバイトの人数が少なかった。柚も、それは分かっていたらしいが、文句言わずに動いている。
レジが終われば、客席が空いた所のテーブルを拭いていた。手慣れていた。恐らくは、ずっとこのマジバでアルバイトをしていたのだと分かる。
ピークが過ぎたのは、暫くしてからだった。柚は、ふぅ~…と深く息を吐いては疲れた表情をする。
「お前、随分と疲れてんだな。休憩したらどうだ?」
偶然、火神の近くにいたのでそんな事を言われてしまった。しかし、休むわけには行かないみたいで柚は、首を左右に振る。
「やりすぎて倒れんなよ?」
火神が心配そうな顔をしながら柚に問い掛ければ、コクコクと頷く柚だった。そして、柚はレジへと戻って行く。
その姿を火神は、目で追っていた。そう、火神はなんとなくだが、ずっと、柚を無意識に見ていたのだ。