第9章 距離感【笠松 幸男】〈アンケート〉
→大丈夫です。1人でもできますよ。
柚は、笑いながら笠松にそんなことを言う。そして、洗った物は籠の中へと入れていく。それだけではない。
今日は、ゼッケンを使った為、ゼッケンも片づけなくてはならない。柚は、文句1つも言わずにテキパキとゼッケンを畳んでは、籠の中へと入れていく。
全てのゼッケンが籠の中に入れて、息を深く吐き出す柚。そして、ゼッケンの入った籠を持ち上げようとすれば、何故か勝手に持ち上がってしまう籠。
不意に目線を上げれば、笠松が籠を持っていた。そのことに慌てる柚の姿に僅かに笑う笠松。
「お前が慌てるとか……珍しいな……。」
笠松が笑っている姿を見た柚も、クスと笑い出す。その事に、不思議に思った笠松は、首を傾げる。
「何笑って……。はぁ!?『笑ってる姿が格好いい』とか、お、お前……へ、変じゃないのか!?」
逆に、今度は慌て出す笠松に何よりも顔を赤く染めていたが、それを見られるのが嫌なのか柚に、背を向けては行くぞ…と声を掛けて歩き出す。
「………お前には…勝てないな……。だが、お前のお陰で、お前と触れ合いたいとは思い始めた。後で、手でも繋ぐか……。」
距離感【笠松 幸男】
〈END〉