第8章 届いて…【黄瀬 涼太】〈リクエスト〉
ある夏休みが入る前の話だ。黄瀬が入っているバスケ部は、暑さにも関係なしに今日も部活活動があった。バスケットボールが偶然、体育館の外へと転がっていった。
「あ、笠松先輩。ボール、外に出ちゃったんで、取りに行ってくるっス。」
「あぁ、悪いな黄瀬。」
黄瀬は、ボールを拾いに行こうとし主将である笠松に許可を出して体育館の外へと行くのだった。ボールは、どこまで転がったのか分からず、キョロキョロと辺りを見回す黄瀬。
ボールは、ある女の子の目の前に止まっていた。その女の子とは、柚だった。不思議に思った柚は、ボールを拾い上げる。
暫くそのボールを凝視していたところ、それに気付いた黄瀬は、遠くの方から声を掛ける。
「そのボール、くださいっス!」
しかし、黄瀬が声を掛けた所で柚は反応を示さない。何よりも黄瀬には気付いていなかった。
「あれ?気付いてないんスかね……。」
黄瀬は、仕方なく柚に近付いていく。しかし、黄瀬が柚に近づいたところで、黄瀬の方を向こうとはしなかった。本当の意味で気付いていないのかもしれない。