第2章 勝利のために
今私はレギュラー決めの試合をしている。
ここで勝てれば関東大会に出られる。
相手は河村先輩
相手はパワーを売りにしているのに対し、こちらはオールラウンダー
長引けば手首ごと持っていかれる。
だが、なかなか決めさせて貰えない
5-5と、随分もつれ込んでしまった。
「まずいなー…」
ラリーが続くに連れ、相手の球の重さが腕に負担をかけている。
そんな不要なことを考えていたのがいけなかった。
「――――っ!!!!」
気づいた時には既に遅く、ボールは私の手首に直撃していた。
「ああああああっっっ!!!!」
ラケットが弾き飛ばされ、遠くまで滑っていく
だが拾うことも出来ず手首を抑えた。
「おい!大丈夫か!?」
河村先輩がこちらのコートまで走って来ていた
手は痺れ、感覚がない。
「大丈夫ですよ…―――っっっ!!」
河村先輩が手首の状態を確認する為、私の腕をとった瞬間激痛が走る
「この手首で続行は不可能だ…」
河村先輩は申し訳なさそうに言う
「やれます!!やれますから続きを――――」
偶然手の空いていた荒井に手当てされながら抗議するも私の抵抗は虚しく終わった
「いや、この手首じゃ無理だ。棄権しろ。」
荒井の非情な言葉に納得が出来ない
「いやだ!俺は――――」
「バカ野郎!!!」
フェンスの向こうから桃の声が聞こえる
「今ここで手首を壊してどうすんだよ!二度とテニスが出来なくなるぞ!!!!」
その言葉に我に返る。悔しくてたまらない。
私は涙を堪えながら、震える声で審判の後輩へ声をかけた
「この試合、棄権します」
堪えていた涙が溢れる
「吉野先輩、棄権により勝者 河村先輩」
ただ、その言葉を聞くことしか出来なかった。