第7章 女帝
――柳side――
俺たちは談話室を後にすると自分たちの施設へと戻ることにした
彼女は藤江に負け、新しい場所を見つけた
彼女にとってはそれで良かったのかも知れない
ふと精市をみると携帯をポケットから取り出し、どこかへ電話をかけている
俺は無言のままその行為を見つめていた
幸村「あ、弦一郎かい?今から出てこれるかい?…………。ああ、話があってね。今からC施設の外のベンチまで来れるかい?ああ、よろしく」
精市はそう言うと電話を切った
「弦一郎に話すのか?」
弦一郎に話をしてしまえば、彼女はもうこの合宿はおろか男子テニス部には居られない。
手に入らないのならば突き落とすか?
幸村「蓮二の予想ははずれ。弦一郎に話したいのは…彼女が元々立海の生徒であったこと。テニス部の自分の後輩だということ。赤也と幼馴染みだということ。強いから引き戻したいこと」
一本一本指を折りながら説明する精市を見ていくつか疑問が浮かぶ
赤也と吉野が幼馴染みだというくだりを聞いた記憶がない
俺の表情から察したのか、精市が説明をしてくれる
幸村「過去に赤也からね、テニスがうまい幼馴染みがいると聞いたことがあるんだ」
なるほど。
「十中八九吉野のことであろう」
俺の返事に笑顔で頷いている
「女子であることは伏せていれば良いのだな?」
説明役は自分であろうと予測し、確認しておいた
幸村「ああ、嘘はついていないからね」
精市はやはり策士だと関心しながら俺たちはベンチに腰をおろした
数分後
ラフな格好をした弦一郎が小走りにこちらにやってきた
俺は精市の望み通りに説明をした
弦一郎は去年の記憶を引っ張り出しているようだ
記憶を探したところで吉野は見つからないがな
こうして俺らの“吉野引き抜き作戦”が始まったのだった
――柳side END――