第3章 合宿までの3日間
私は本物の男になることは出来ない
それでも今だけは
この青学にいる間だけは
神様許してください
ここにいさせてください
先の方に光を見つけた
「あ、出口!」
私達は頷き合い小走りに抜ける
手錠のカチャカチャ鳴る音と触れる骨張った手の甲
手はもう繋がれていない
繋ぐ必要がなくなったのだ
少し寂しいなと思うと同時に出口を抜けた
暗いところで慣れてしまった目は少しだけ光を拒んだ
「お疲れ様でした〜!スタンプ押しますね!」
スタッフの明るい声が聞こえ慌てて用紙を出す
これで二つ
あと一つだ
ジェットコースターはどの種類を乗ってもスタンプが貰えるらしい
手近なものに乗り、難なくクリア
用紙を見せて最後のスタンプが押された
「コンプリートおめでとうございます〜!受付へ戻ってこの紙をお渡し下さい〜!」
その言葉に軽く会釈し、受付へと戻ることにした
「みんな終わってるかな?」
話すこともなくてそんな話題を振ってみる
「さあな」
相変わらずそっけない態度で返されてしまった
でも何故だろう。
今わたし達を繋げているのは不格好な手錠でも繋がれていた手でもなく
心
そんな風に思えた
とてもクサイ台詞なので絶対に言わないが
受付に近くなると、先の方に大石先輩と英二先輩が紙を出しているのが見えた
「まじかよー、間に合わなかった…」
がっくり肩を落とし、クリアした
手錠を外してもらい景品を受け取る
ネコ柄の可愛らしいペアストラップだった
「わーい!俺らがいっちばーん!」
ぴょんぴょん跳ねながら喜ぶ英二先輩を眺める
私はペアかけてたんだけどなーと悔しくなる
「おい真琴」
海堂に呼ばれ、ペアの件は無しだなと悟る
「わかってるって。あの話はナシだろ。」
私の言葉を聞いた海堂がいや、と言葉を濁した
「一度だけだ」
ボソッと言うとそっぽ向かれてしまった
「え?まじ?」
尋ねるが答えはない
つまり了承なのだろう
「よっしゃ!!」
握り拳を固め喜んだ
左手首が手錠のせいでじんじん痛む
だが、その痛みが現実だと教えてくれた