第1章 涙とリボン * 辺 ▶男主
「ねぇ」
「……」
「ねぇってば」
「…」
「ナターリヤ」
「…ッ!!」
何度話しかけても返事をしないもんだから
いつものように名前を呼んであげると、真っ赤な顔をして睨みつけてくる俺の可愛いナターリヤ。
思わず口端から笑みが零れると眉間に皺を寄せ最も不機嫌な表情をする。
「拗ねてんの?」
そう問えばキッと睨みつけてまたそっぽを向く。
ははーん
さては、コイツ何か勘違いをしているな。
「もしかして、昨日ナターリヤを放ったらかしてライナ姉さんとデートしてたから?」
顔色を伺うように問うてみると、どうやら図星だったらしい。
「貴様ッ、分かっていたのなら…」
「おっと、はいこれ」
危うくナイフに当たりそうになり、軽く避けて包みを渡す。
「なんだこれは」
「何だ、って誕生日でしょ?」
ライナ姉さんと一緒に選んだんだ。
「リボン…」
そう呟いて何故か眉間に皺を寄せるナターリヤ。
何か気に食わなかったのか?
「えっと……もしかしていらなかった…って」
なんで泣いてんの。
「悪い、また別のもん買ってくるからさ、泣くなよ」
「…違う…そうじゃない…」
不思議に思いながらも何をしたらいいのかわからなくて、とりあえず「泣きやめ」、と頭を撫でてやると「触るな」と一喝されたので落ち着くまでそわそわしながら待っていると、重い空気の中最初に口を開いたのはナターリヤだった。
「…大事にする。」
「へ?」
「……Дзякуй.」
そしてまたそっぽを向いた。
嬉しくて赤くなった彼女の瞼にキスを落とすと、「調子に乗るな」と怒られた。
今日一日は仰せのままに。