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短編集《 黒子のバスケ 》

第3章 tear and smile/黒子テツヤ




「黒子君…?」



子供のように泣きじゃくるボクの背中を優しく撫でてくれる。
カッコ悪い。カッコ悪いのはわかってはいるけれどそんなことでとても止められるような気持ちではなかった。



「すみません…ボク…ボクは…」
「…ゆっくりでいいよ」



ゆっくりと息を吸う、吐く、吸う、吐く。
気持ちを少し落ち着かせて、彼女と改めて向かい合う。



「ボクは…君が好きです」



一瞬、恋人だと言いそうになった。
だけどそうなんだと錯覚して、本当に思い出した時にその感動と愛しさが欠けてしまう気がして言い止まった。
自分勝手だと思う。
だけどそれくらい許してくれてもいいんじゃないだろうか。
もう十分苦しんだのだから。



「…く、ろこ、君」
「ボクは、ボクは、ずっと君のことが、好きで、…っ」



溢れる想いを、我慢してきた想いを全て伝えていたら唇に何かが触れた。
…彼女が、しーっと人差し指を押し付けていた。



「あの日も、そう言って一生懸命伝えてくれたよね」
「え…?」



彼女は静かに、涙を流しながら微笑んでいた。



「あの日も、いつもと違う様子でビックリしたけど…真剣な顔で言うもんだから私、本当この人はカッコいいなぁって」



ゆっくりと、思い出すように、



「全部、思い出したよ…」
「…さん…」



彼女はボクの名を呼んだ。



「…テツヤ君」



恋人であったあの頃のように、そう呼んだ。


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