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短編集《 黒子のバスケ 》

第3章 tear and smile/黒子テツヤ



「はーぁ、楽しかった!」
「それは良かったです」



ボク達はあれからもいろんな思い出の場所を回った。
彼女はどこでも楽しそうに笑ってくれた。



「ねぇ、黒子君」
「はい」
「私達って、すごく仲が良かったんだね」
「えっ」
「こんなにいろんなところに行って、いろんな思い出があるんだもん」
「そう…ですね…」



そう、仲が良い。確かにそうだった。
恋人になって何ヶ月も経ってはいなかったけれど、ボクは初めての恋人だったから張り切っていていろんな所へ連れて行っていた。
短い時間の中で沢山の思い出を作った。
けれど張り切りすぎたのがいけなかったのか、何がいけなかったのか、神様は意地悪だった。



「黒子君…?」



どうして神様はこんなにも酷いことをしたんだろう。

ボク達が何をしたって言うんですか。
ボク達に何の恨みがあるんですか。
どうしてボクじゃなく彼女をこんなにも苦しめるんですか。





ど う し て 、






「黒子君…どうして泣いてるの…?」
「え…」



気づけばボクは泣いていた。
ずっと、ずっと我慢していたのに、今このタイミングで泣いてしまっていた。



「泣かないで…」

そっと近づく彼女。

そんな泣きそうな顔しないで。
すぐに泣き止みますから。
ボクは君の笑顔が見たいんです。



「どうしたの?」

優しくて温かい手がボクの涙を拭う。

拭ってあげなきゃいけないのはボクなのに。
すみません、ボクは弱虫です。
君が遠く感じて、怖いんです。



「私なら、ずっとそばにいるよ」

ボクの心情を読み取ったのか、彼女はそう言った。

本当ですか?いつか、記憶が戻りますか?
記憶が戻ったら、またボクのところに戻って来てくれますか?
ボクが恋人だと、笑って好きだと、愛してると、言ってくれますか…?




「さん…っ」



もう想いは止められそうになかった。
いや、止められなかった。

ボクは彼女を抱きしめた。


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