第1章 君の声にかき消されて…
こんなにも力強く、かと思えば甘く、そしてワイルドに歌い分けることが出来る人がいるだなんて…。
「どやった?俺の歌は。
花音なんか、まだまだやろ?」
挑発的な笑みを浮かべながら言う渋谷さん。
渋谷さんの凄さを知らない人はこの言葉にムッとするだろう。
けど私は渋谷さんの凄さを目の当たりにしてしまった。
渋谷さんに魅せられてしまった。
それを思い出すと…。
「はい、私なんてまだまだです」
そう言うしかなかった。
だって事実なんだから。
自分の未熟さを痛感した。
私の歌はただ歌うだけの機械的な歌。
それに比べて渋谷さんの歌は見る人を惹きつける心の入った歌。
いつか私もこんな歌を歌いたい。