第1章 ※
その日、私はお団子の材料を買うために城下に出ていた。
才蔵さんが留守なこともあり毎日団子の試作をしていたけれど。
どうも最近、味の種類に行き詰まりを感じてきたからだ。
いろんな食材を見て何か新しい味や風味付けを思いつかないかなあと。
帰ってきた才蔵さんの喜ぶ顔も見たいし、びっくりさせたいしな。
才蔵さんは基本的にお団子ならどんな味でも全部食べてくれるけど、反応が薄いから。
京の町なら日々新しい食材が発見できたけど。
ここでは流石になあ…。
とは言いつつ質の良い砂糖を見つけたので購入した。
お団子の基本だもんね。
少し嬉しくなった帰り道、道に人だかりができているところに出くわす。
「気の毒になあ、行き倒れか?」
「いや、まだ息があるようだ。
何か病で倒れたんじゃないのか?」
人垣を覗いてみると行商人のような男性が倒れている。
ほんとお気の毒。
まだ若そう。
私と年も近そう。
でもなんか見たことあるような着物や風呂敷の柄?
はっと思って顔が見えるところに移動する。
ん?!彦兄ぃ?!
私はびっくりしてしまった。
「ごめんなさい、通してください、知り合いかも…」
人垣をかき分けてすぐそばに近づき、男の人の体を揺する。
「もしかして…彦兄ぃ?彦兄ぃ?」
薄眼を開けて男の人が言う。
「彦…にぃ?俺は彦左…お前は誰…」
「私よ、あやね!あなたはいとこの彦兄ぃでしょ?」
「え…、あやねちゃん?久しぶり…」
「どうしたの?彦兄ぃ?」
「腹が…減って、3日…食べて…ない」
私は近くの人に手伝ってもらい
大八車を借りてお城へ彦兄ぃを連れて行った。
お城に帰るとみんなが目を丸くしてびっくりしていた。
いきなりあやねが男を連れて帰った。
しかも大八車に乗せて。
「どうしたの、あやねちゃん?その人は誰?」
「説明はまた後でゆっくりしますから!
ごめんなさい!」
そう言って私は急いで彦兄ぃを自室に運んだ。
そして布団を敷き寝かせた。
「待ってて、彦兄ぃ、おかゆを作るから」
「いや、もっと…腹にたまるものが…」
「だめよ、いきなりそんな。
お腹がびっくりするから。
いいから寝てて!!」
あやねが男を連れ帰ったことは
話が誇張されて幸村の耳に入った。