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苦しみの中の幸せ〔銀魂 土方おち やや逆ハー〕

第3章 いざ、江戸に行かん!?


ここは、春雨母艦。
宇宙のど真ん中に漂う巨大な戦艦は、周囲とは不釣り合いだ。

何一つ存在しない虚空の空間に、
ぽつんと存在するそれは
虚しさを抱いたように怪しい造形をしている。

『いつ見ても慣れるわけない、か…』

私は、窓の縁を指でなぞった。
冷たく、金属特有の固さが私の指を刺激する。

阿「元々地球育ちのあんたじゃ、なかなか慣れねぇよ」

背後からの声に振り返ると、声の主は見つかった。

『田舎者には広すぎるって言った?阿伏兎』

私が阿伏兎と呼んだその男は、第七師団の団員。
同時に、私のよき相談相手でもある。

阿「そこまでは言ってねぇ。まあ、似たような事は言ったが…な」
『その通りすぎて反論が出来ない場合、どうすれば』

私の率直な疑問に阿伏兎は苦笑すると、ある一点を指さした。

阿「そろそろ見えるんじゃねぇか?」
『…久々に憂鬱って気分を体験してるんだけど』

口内に溜まった重苦しい息を思い切り吐き出す。
そんな私の様子に興味深そうな阿伏兎。

『なによ』

八つ当たりに近い口調でそう問えば、阿伏兎の嬉しそうな笑い声が聞こえる。

阿「アンタでも、そんな顔するんだな」
『どういう意味?』
阿「嫌で嫌でたまらないって顔に出てる」

嫌で嫌でたまらない?
そりゃそんな顔をしたくなるに決まっている。

つい先刻、私は春雨の元老に呼び付けられた。
心当たりは・・・まあ、多すぎて数えきれないが、いつもの通り言い包めてしまえばそれで終了だと、甘く考えていたのが祟ったのだろう。

「江戸へ行け」

たったその一言。
だが、その一言が私の人生を大きく狂わせるであろうと
簡単に予測がついたのだ。

女で、しかもまだ若い私。
そんな私が、この「第七師団団長」という地位に居ることに不満がある者は多い。
一種の左遷だと考えるのが正しいのだろう。
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