第5章 【SO】影山飛雄 〜言葉ハ雨ニトケテ〜
気持ちを自覚した所で、インハイ予選を目前にした俺には、行動に移すような時間はなかった。GWは合宿だったし、毎日練習漬け。頭の中はバレーの事ばかりになって、そのせいで先輩への気持ちは次第に薄れていって気づいたら思い出すこともなくなっていた。
5月も終わりに差し掛かり、雨の日が増えた。
今朝のテレビのニュースでは梅雨入りが宣言されたが、朝は雨が降っていなかった。
ちっ、、、、
雨は嫌いだ。
ザーザーうるせーし。
傘さすのも面倒くさい。
正面玄関に座り込んで傘を持ってこなかった俺は、雨が弱まるのを待っていた。
校庭に打ち付ける雨をじーっと見ていると、
すぐ隣で傘を開く音がして、うるせぇな、と思って睨みつける。
「えっと、、、傘、忘れたの?」
頬に触れた髪を耳にかけて、こちらを見る。
先輩だ、、、
俺の心臓は初めて出会った日を思い出したみたいに、またドキドキと鳴り出した。
「はい、雨弱まったら走って帰るつもりです。」
『そっか、じゃあ、バイバイ。影山くん。』
「あ、っす、、、さよなら、、、」
出かけた声がうまく言葉にならなくて、呼び止められずに、先輩の遠ざかる背中を見送る、、、、
雨は何分待っても弱まる様子はなかった。
俺は諦めて濡れて帰る覚悟をして立ち上がろうと腰を上げて目線を上げた。
「え、、、どうしたんスか?」
目の前にはさっき帰ったはずの先輩が息を切らして肩を上下させて立っていた。
『駅までなら入れてあげてもいいよ。』