第1章 日向翔陽 『あたしも。俺も。』
残された時間は少ないのに、上手く言葉が出なくてつい思ってもいない事を言ってしまった。
「すいれん先輩もきっと大学生活楽しいですよ!
きっと高校の事なんか思い出せないくらい充実してますって!!
サークルってのがあるって菅原さんに聞きましたよ!
楽しみだらけじゃないですか!!」
「翔陽くん…
本当にそう思って言ってるの…?」
すいれん先輩は俺の手を離して立ち止まった。
「あたしそんな風に見えてるかな…。
こうして一緒に居るのが嬉しいって思うのって
あたしだけなのかな…」
気持ちが溢れてもう我慢出来なかった。
華奢な体…小さい俺でも包んであげられる。
そっと引き寄せて
本当の気持ちを伝える事にした。
「そんなわけないです…。
俺だって…すいれん先輩と一緒に居たい…一緒に卒業したい。
春から学校に居ないなんて
淋しいです。
俺も2年早く生まれたかった。」
「あたしだって2年前に生まれたかった…。
もっと翔陽くんと一緒に高校生活過ごしたかった…。
影山くんずるい〜!」
「なんで影山がでてくるんですか!じゃあ俺は旭さん!!」
「東峰くんは就職だから大学じゃないよ〜!」
2人でクスクス笑ったら、
すごく気持ちがスッキリした。
「2年なんてすぐ経っちゃうよ!あたし待ってるから!」
「だ、大学生…さっきのナンパ野郎みたいなやつがうようよいるのか…。」
震えてるんじゃなくて、これは武者震いだかんなっ!
「あれ?もうさっきみたいに守ってくれないんですか?日向くん?
あ〜ぁ…ヒーローみたいでかっこよかったのになぁ…」
茶化すようにからかってくる先輩の口を優しく塞いで
俺でよければ喜んで
というとすぐ赤くなる。
そんな可愛い人が俺の彼女です。
END