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カミツレの誤算

第1章 桜の花散ることも無し



2.


「おーい!ハジメー!」
特徴のある低音が僕を呼ぶ。
青年は、長い手足を振り回しながら
無駄に大きいリュックサックを
揺らして近づいてきた。
こいつの名は、小堀春(こぼりはる)。
僕と同じ瓶ヶ原(かめがはら)町立
陸山(くがやま)中学校の出身で、
二・三年で同じクラスだった。
バカだが、お人好しで
誰にでも分け隔てなく接し、
常に周りには人がいた。
更に、女子から見れば“イケメン”という
部類に入るらしく、同級生や
後輩中心にファンが数人いたらしい。
「~でさ!...?聞いてる?」
「あ、いや、すまん。」
ハジメってそういうとこあるよなっ!
どういうとこだ。
確かに、今は考え事(?)をしていて
聞いていなかったが、
いつもでは無いはずだ。
...たぶん。
「で、その...なんだって。」
「部活の話。ハジメはなんか入んのか?」
部活...か。
「入らんな。」
中学時代は美術部か花道部にでも
入ろうかとも思ったが、
兄たちに馬鹿にされ、拗ねた僕は
結局何もやらなかった。
というのも、
僕には上に兄が二人と
姉が一人いるのだ。
長男は高校弓道全国2位。
次男は全国高校書道の
かの有名な九十九杯で最優秀賞。
姉こそ部活には入らなかったものの
23歳にして、世界有数の
大手物流会社に幹部として
鎮座している。
優秀な兄姉たちに比べ、
僕はだいぶ劣っていた。
それ故に、早い段階で親には諦められ、
家業をも継がなくて良いことになっている
継ぎたいと思ったことはないが、
酷い話である。

「実は、ハジメに良い話があるんだ。」
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