第16章 ◆雨乞儀式
「 時間が無い、
このままでは日照雨様が暴走しかねん。
私は日照雨様の所まで行く、
さな様と夏目様は
この縁側の縁にいて貰えるか。」
「 ・・・はい。」
「 分かった。」
広く続く雨乞い儀式の間
女狐妖に誘導されるがまま
その端へと座り一呼吸置くさなと夏目。
その隣へポスンと丸くなるニャンコ先生も
目つきは真剣だ。
「 ・・・頼むぞ。」
女狐妖は三人を一見して
その一言だけを残し
少し離れた日照雨様の元へと移動する。
「 ・・・。」
「 大丈夫だ、さな。」
不安の眼差しで
女狐妖の後ろ姿を見送るさな、
着物の上で控え目に組まれたその手の上に
夏目がそっと自身の掌で覆った。
「 幾分、口調からも
男らしくなっているしな。」
ふん、と
夏目の隣でニャンコ先生も鼻を鳴らす。
「 ・・・そう、ですね。」
日照雨様が消え入る姿。
それは見せたくないものだと、夏目は言った。
それは日照雨様の気持ちを汲んで
放った言葉だったが
今、目の前の女狐妖がいれば
日照雨様のその消え入る姿ですら
儀式の為の儀式となる
、のだろうとさなは感じた。
「 頑張って下さい。」
一体、後継の儀とは如何なものか。
想像もつかない事ではあるが
目の前の女狐妖を信じ、
祈るようにさなは瞳を閉じた。
「 ・・・日照雨様、
これが最後です。」
グググ、と蹲る
とうに限界を越えた日照雨様の前に
女狐妖が跪いた。
少し儚げな言葉を添えて。