第36章 第35セット
*岩泉side*
「わりぃ。ちょっとコイツ交代してくんね?」
嫌がる優を半強制的に交代させ用具室に入る。
「不機嫌顔してもダメだ。昨日痛めてんだろ?」
ますます眉間にシワの寄る優。
「出るなとは言わねーよ。ホラッ、足出せ。テーピング巻いてやるから。」
渋々足を出す。
「どーせ出んなっつっても出んだから、酷くなんねーようにだけしといてやるよ。にしてもほんっと昔から変わんねぇよな。」
失礼なッ!とか思ってんだろうな。
けど、ガキの頃も怪我してバレーなんか出来ねーのに無理やり試合出たことがあった。
あの頃と何ら変わりねぇ。
「ほら、できた。悪化すると後に響くからな。フルには持ち込むなよ。ストレートで勝ってこい。俺らとやるんだろ?」
シューズの紐をキュッと結び、グッと伸びをしてニッコリ笑い、俺の顔の前にピースを出してきた。
『勝利』のサイン。
「行ってこい!」
優を送り出し、俺もギャラリーに戻る。
及「どうだった?」
「余裕だろ。なんたって、俺らの幼馴染みなんだからな」
一気にカタをつけるため、優がWSに入った。
そこからは一点も相手に渡さず1セット目が終わった。