第2章 紳士君、大誤算。
~孔明side~
「468円になりぁーす。」
レジを打つのも面倒臭そうな新人のバイトを横目でちらりと見て、俺はぼんやりした頭でがさがさと音を立てるビニールを眺めていた。
「ありがとうござぁーしたぁ。」
気だるそうに吐かれた台詞は自動ドアと真夏の暑さに消されていた。夕方とは言え、まだこの季節は十分に暑い。
少年誌と炭酸飲料の入った袋をぶらぶらと揺らしながら、俺は部屋に置いてきた媚薬の事を考えていた。
密林で注文した日の翌日に届いたそれを、あらかじめテーブルの見えないところに隠しておく。
その後天音を部屋の外まで移動させてその隙に・・・
媚薬を購入したときのテンションでこの作戦を考え、一度も作戦を練り直す事無くそのまま寝たため、言うまでも無く成功率は低い。
だがもうここまでやってしまっている。
あの天音の事だ、バレればリスクはかなり高いだろう。
自分の計算だと、このままのペースで部屋に戻ってもまだ天音は楽しそうに焼きうどんを作っているだろう。
その間に炭酸飲料にでも入れとくか。
勝手にこんな事を目論んでいるが少し罪悪感が無いわけでも無い。だが実行はする。
よっぽど機嫌の良い時以外は自分に甘えてくれない彼女の、ちょっと甘える通り越してデレデレ状態が見たいなー・・・。
と言う、普段の自分なら絶対にしないような(自分基準で)結構ひどめのこのイタズラ。
どんな事になんだろ。
ちょっとだけ期待に胸を膨らませながら、エレベーターのボタンを押した。