第4章 昔の話だけれど
私とディオは双子だった。私が姉でディオは弟、といっても双子だから対して物事に差はなくて、同じくらい同じことができた。
貧しい生まれの私たちはもちろん勉学なんてできなくて、そこらのバーに行って大人たちを観察し、どんな仕草が大人にとっていいのかというのだけを学んできた。だから猫かぶりは得意な方。
「姉さん、コレ」
「なあに?」
とある日ディオは私に小さな包みを持ってきた。今までに見たことがないくらい綺麗な包装用紙で驚いてしまった。
「…いつもぼくのことばかり気にしてるだろ?だから」
今年の冬は冷えるからといって、無地の赤いマフラーを買ってくれていた。
「こ、こんな…いいの?」
「姉さんのために買ってきたんだ」
嬉しくて嬉しくて、涙が止まらなかった。私はディオをぎゅっと抱きしめて離さなかった。なんでこんなにいい弟を持ってしまったのかしら、私はダメな姉なのに…と泣いた。
「姉さんには赤い色がにあうよ」
「…ありがとう、ディオ」
私はその日からマフラーをして出かけることにした。肌身離さず持っていて、本当にうれしくて、つけているときはずっと口元がだらしなくにやけていたと思うわ。
本当に…嬉しかったんだもの。弟からのプレゼント。
それから月日は経ち、10歳になって暫くするとお父さんの体調が悪くなっていった。
もうだいぶ前にお母さんは亡くなってしまい、お父さんには虐待まがいの行為までうけてた。
「お、おとうさ、」
「いいから酒買って来い!!」
ビンが投げつけられ、かろうじて避けるものの割れた破片が飛んできて頬をかすめる。怖い、ディオ、早く帰ってきて、とずっと願っていた。
ディオはお父さんの体調が悪くなったころから家にいることが少なくなっていった。何故私を1人にするの?と、不安だった。