第2章 悪者トロイメライ
“16日までに荷物を纏めてこの古城に移住して来い。 分かったな?”
一次、二次と試験をまぐれで合格したはギディオンにこう言われていた。
極悪な組織に入るからにはやはり親元を離れなくてはならず、完全に元の生活とは断ち切るようにと言われたのでは普通の市民としての最後の一日を生まれて育ったアンカトルロッチ郊外で過ごすことにした。
「! 昨日探したのにいなかったけど何してたんだよー!」
が家の前でドアを開けようとしていると、幼馴染のルカが声をかけてきた。
綺麗な茶髪を揺らしながらこちらに駆けてくる。
狭いこの郊外で唯一と同じ歳であり、小さな頃から常にと一緒にいた幼馴染。
モデルをしており、ニューヨークに飛んでいたのだがどうやら昨日帰ってきたらしい。
「あーうーん、ちょっとね! まあ、私にもいろいろ用事があってさ」
下手ながらは昨日のことをぼかした。
盗賊集団に入団するための試験を受けていましただなんて口が裂けても言えることではないとはよく分かっていた。
「ふーん? じゃあ今日どっかいかない? 俺また明日にはいなくなっちゃうからさ」
「え、あ、でも私も……あ、学校の寮にうつるための荷物まとめなくちゃいけないから……」
そう言うとルカが明らかに寂しそうな表情を浮かべたので、はすぐにルカの手を握った。
「じゃあ荷物まとめるの手伝ってよ! ね?」
お願い、とが言いくわえるとルカはすぐに微笑んだ。
「任せろ」